アントニオーリの漆黒と、ナヴィリオの夕暮れ。イタリアへ美の「純度」を追い求める旅

2025.12.30

ミラノでの滞在は、単なる観光を越え、自分という表現者が持つ「感性の深度」を測る旅となってきました。

訪れたこの街は、石畳の一枚一枚にまで職人の誇りと、それを愛でる人々の生活が染み付いています。

パリで見つめた鋭利なモードの余韻を抱えたまま、自分はイタリアが誇るもう一つの「美の聖域」へと足を踏み入れました。

ファッションの聖堂「アントニオーリ」で出会った、未知なる美の衝撃

ミラノ2日目、自分はさらに深くこの街のモードを体感するため、運河沿いのナヴィリオ地区にある伝説的なセレクトショップ、「Antonioli(アントニオーリ)」へと足を運びました。

ここは、世界中のファッショニスタが巡礼のように訪れる、まさに「表現の聖堂」です。

一歩足を踏み入れた瞬間に感じたのは、そこが単なる「服を売る場所」ではないという圧倒的な空気感でした。

漆黒を基調としたミニマルで静謐な空間には、Rick OwensやComme des Garçonsといった日本を代表する先鋭的なブランドから、これまで目にしたことも耳にしたこともないような、エッジの効いた未知のラインナップが整然と並んでいました。

 

その圧倒的なキュレーションの力、そして「売れるかどうか」ではなく「美しいかどうか、新しいかどうか」で選ばれたプロダクトの熱量。

ディスプレイされたパルファムの静かな香りが漂う中で、自分のクリエイティブが根底から揺さぶられるような、圧巻の体験をしました。

店内に並ぶバッグ一つをとっても、その素材感やフォルムには作り手の執念が宿っています。

パリのアーカイブ展で見たマルジェラの衝撃が、ここミラノの最先端の現場でも共鳴している。

自分はしばらくの間、その空間が放つ美の重力に身を任せていました。

ショップを出ると、ちょうど街は夕暮れに包まれ始めていました。ナヴィリオ運河沿いの橋には、無数の「愛の南京錠」が夕陽を浴びて鈍く光っています。

電車に揺られながら窓の外を眺めると、ミラノの古い石造りの街並みが、まるでセピア色の映画のようにオレンジ色の光の中に溶けていく。

そのあまりの美しさに、自分はただ、流れていく景色をファインダー越しに見つめていました。最先端のモードを提示するアントニオーリのすぐそばで、数世紀前から変わらない夕焼けが人々の営みを照らしている。

この「破壊的な新しさ」と「圧倒的な不変」の調和こそが、ミラノという街の真髄なのかもしれません。

偶然が紡ぐ夜。―英国人の友人、ステーキ、そしてトリュフの薫り

夜は、昨日訪れてあまりにもその味が忘れられなかったレストランへ、吸い寄せられるように再び向かいました。

旅において、常に新しい場所を求めるのも一つの醍醐味ですが、心から「ここだ」と思える場所へ二夜連続で通い詰めることで、その街の深い体温に触れられる感覚があります。店員との何気ない挨拶さえも、昨夜より少しだけ親密さを増しているように感じました。

活気あふれるカウンター席で、たまたま隣り合わせたのが、イギリスから来たという彼でした。

言葉や国籍、歩んできた背景は違えど、目の前の美味しい料理とワインを前にすれば、自然と会話の壁は消えていきます。

彼とのツーショットを収めたその瞬間、この旅が自分一人の内省的なものではなく、世界中の「個」と交わり、新しい刺激を分かち合うための冒険であったことを再認識しました。

この夜の食卓の主役は、完璧な火入れによって肉本来の力強さが引き出された分厚いステーキ、そしてテーブルに置かれた瞬間に官能的な香りが一気に立ち昇る、トリュフ入りのカルボナーラでした。

ボケちゃってますね。笑

さすがはイタリア。パスタの一本一本に絡みつく濃厚なクリームと、鼻を抜けるトリュフの高貴な薫り。そこに合わせる赤ワインの重厚なタンニンが、すべてを完璧な調和へと導いていく。

シチリアの記憶を辿る。―オレンジが香るアジのフライと、海の幸の余韻

翌日、自分の身体が求めていたのは、ミラノの洗練とはまた違う、太陽に近い南イタリアの情熱でした。宿泊先の近くで見つけた、家庭的な雰囲気が漂うトラットリアの暖簾をくぐり、シチリア料理をオーダーすることにしました。

選んだのは、かつてシチリア島の本場で食べて感動した、アジの揚げ物に新鮮なオレンジを挟んだ一皿です。サクッとした衣の中から溢れ出すアジの濃厚な旨味を、オレンジのフレッシュな酸味が軽やかに引き立て、後味を爽やかにさらっていく。

その鮮やかなコントラストに、自分の記憶は一気に地中海の青い海と、あの乾いた風の匂いへと引き戻されました。

さらに運ばれてきたのは、海の幸をふんだんに使った盛り合わせ。タコ、エビ、アサリ……一つひとつの素材が、過度な味付けを拒むように、そのもの自身が持つ力強い生命力で迫ってきます。

「文化とは、余計なものを削ぎ落とした先にある、本質の塊。」

アントニオーリで見つめた先鋭的なモードも、このトラットリアで味わった素朴で力強いシチリア料理も、根底で繋がっているのはその「純度」の高さに他なりません。

ミラノという巨大な文化のフィルターを通すことで、自分の中にある美学がより研ぎ澄まされ、余分なノイズが消えていくのを感じました。

結び ― 時間の重みと、新たな決意

ミラノでの時間は、遠い昔の自分と現在の自分を対話させる旅でもありました。

かつては見落としていた石畳の質感、職人の指先に宿る矜持、そして食卓を囲む人々の豊かな表情。

 

それらが単なる風景ではなく、一つの「文化」として溶け合い、今の自分のクリエイティビティに新しい栄養を与えてくれました。

フランス・パリでの「伝統と革新」の衝撃。そしてイタリア・ミラノでの「洗練と日常」の調和。

この二つの都市を巡る旅は、自分に「本物とは何か」という問いに対する一つの答えを提示してくれました。

次回はミラノからローマへ。

お楽しみに。

この記事を書いた人

TAKASHI YAMANAKA
TAKASHI YAMANAKA代表取締役
1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
▪趣味:旅行 ギター 読書 キャンプ 釣りとか…
10年前に始めたBLOGも800記事を超えました。
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この記事を書いた人

TAKASHI YAMANAKA

CEO

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