七年ぶりに、ダナンへ来ました。
自分は沖縄の那覇空港からそのまま向かいました。
みんなは広島から、東京から、それぞれの暮らす街から集まって。
夜の便で降り立った空港の空気は、記憶よりもずっと熱を帯びていました。
七年ぶりの、夜
着いてすぐ、誰からともなく屋台へ足が向きました。
黄色いプラスチックの椅子に腰かけて、湯気の立つ器を囲む。
骨つきの肉と、つみれと、白い米の麺。かたわらには、よく冷えたビール。

七年という時間が、その一杯でするりとほどけていくようでした。
変わっていくのは街のほうで、この人たちとの距離だけは、少しも変わらないのだと思いました。
浜が、変わっていた
翌朝、海沿いをゆっくり歩きました。
白い砂浜のそばに大きな文字のオブジェが立っていて、たくさんの人が写真を撮っている。
前に来たときにも、この浜には立ったはずなのに、記憶のなかの風景とはずいぶん違いました。

遊歩道は広く整えられ、椰子並木の向こうには、高い建物がいくつも増えています。
砂の上には色とりどりのビーズクッションが並び、思い思いにくつろぐ人たちの姿がありました。

街が、確かに前へ進んでいる。
その速さに、うれしいような、少しさみしいような気持ちになりました。
働くことも、旅のうち
昼下がり、海の見えるカフェに入りました。
アイスコーヒーを頼んで、少しだけパソコンを開く。
窓の外では椰子の葉が揺れて、道にはバイクの群れが流れていきます。

旅先にいても、手のひらのなかで会社とつながっていられる時代です。
働くことと、休むこと。その境目がやわらかくほどけていく感覚を、この街の風のなかで味わいました。
潮風と、灯りと
陽が傾くと、浜辺の空気ががらりと変わります。
雲の切れ間がやわらかく色づいて、海がゆっくりと暮れていきました。

やがて椰子の木に灯りがともり、波打ち際のクラブがゆっくりとにぎわいはじめます。
七年前には、こんなにおしゃれな場所はなかったように思います。

仲間と缶を軽く鳴らしながら、暮れていく海を、ただ黙って眺めていました。
何を話すでもない時間が、いちばん贅沢なのだと思います。

海の恵みを、囲んで
夜は、海鮮の店へ向かいました。
大きな水槽に貝や海老がびっしりと並び、値札がずらりと下がっています。

青く光る生簀をのぞき込みながら、あれがいい、これも食べたい、と選んでいく。
自分たちで選んで、蒸してもらって、また一つの卓を囲みました。

誰が何を頼んだかで笑い、味の感想でまたひとしきり笑う。
こういう時間のために人は集まるのだと、湯気の向こうの顔を見ながら思いました。
ひと晩明けて、この日は少し足を延ばしました。
向かうのは、街を離れた高い山の上。
雲のなかに、もうひとつの世界があると聞いて。
雲へ、のぼる
山のふもとは、まるでお祭りのようでした。
煉瓦造りの大きな門に、朝から人の波が吸い込まれていきます。

門をくぐると、噴水の広場に出ました。
見上げた先の緑の斜面を、小さなゴンドラがいくつも、雲のほうへとのぼっていきます。

自分たちも、長いロープウェイに乗り込みました。
ゴンドラが高度を上げるほど、眼下に深い緑の山なみが広がっていきます。

足もとには、岩がちの渓流と赤い屋根の館。
すれ違うゴンドラが、緑の海に浮かぶ小舟のようでした。

見下ろせば、谷あいにいくつもの建物が寄り添い、その先に街と海がかすんでいます。
振り返るたび、この国が高いところへ、遠いところへと手を伸ばしているのを感じました。

のぼるにつれて空気はひんやりと澄み、下界の暑さが嘘のようでした。
雲が、すぐ手の届くところを流れていきます。
大きな手の、上で
山の上に、あの橋がありました。
巨大な石の手が、金色の橋をそっと支え持っている。
写真で何度も見た景色のうえを、今日は自分の足で歩きます。

橋の上は、世界じゅうから集まった人たちでにぎわっていました。
みな同じように声をあげて、それぞれにカメラを向けています。

人の手が生み出したものが、これほど人の心を動かすのか。
少し不思議な気持ちで、雲の上の橋を渡りきりました。
雲の上の、街
橋を渡った先には、まるでヨーロッパのような街並みが広がっていました。
石造りの城、尖った屋根、坂道と広場。
坂をのぼる人の波にまじって、自分たちものんびりと歩きました。

そのすぐそばには、荘厳な寺院の門もありました。
漢字の額と龍の彫りが、青い空にくっきりと映えています。

いくつもの世界が、ひとつの山の上に同居しています。
山をまるごと物語の舞台に変えてしまう、その発想の大きさに、ただ圧倒されました。
山の上の、祝祭
歩き疲れた頃、大きな醸造所のような建物に入りました。
高い吹き抜けに銀色のタンクが並び、天井にはビール祭りの飾りが揺れています。

長い木のテーブルには、できたての一杯を手にした人たちがずらり。
樽をかたどった空間に、乾杯の声が絶えず響いていました。

見上げれば、天井を埋めつくすビール祭りの旗。
樽をかたどった照明の下を、旗の列がどこまでも続いていきます。

売り場には、麦芽の標本と、ずらりと積まれたクラフトビールの缶。
つくり手の遊び心が、隅々まで行き届いていました。

山の上で乾杯するなんて、七年前には想像もしていませんでした。
街も、山も、この国は新しい遊び方を次々と生み出しているのだと感じます。

路地の、フォー
山を下りた翌日は、街へ戻り、配車アプリで呼んだバイクの後ろに乗りました。
細い路地を、風を切って抜けていく。これも旅の景色のひとつです。

降りた先の店で、青い絵付けの器に盛られた牛肉のフォーをいただきました。
澄んだスープに、細い米の麺。やさしい味が、歩き疲れた体にしみわたります。

スープを飲み干して、この数日をゆっくりと思い返しました。
変わっていく街と、変わらない仲間と。
七年ぶりのダナンは、その両方を確かめる旅になりました。
けれど、旅にはもう少しだけ続きがあります。
この街を離れる日のことは、次の記事につづろうと思います。
この記事を書いた人

- 代表取締役
- 株式会社FIRST MADE代表取締役。
Webブランディング10年を経て、2026年に中小企業向けAIエージェント事業「FIRST INTELLIGENCE」を立ち上げ。
自社でも15名のAIエージェントを日々の業務に運用し、実体験に基づくAI導入支援を行っています。
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