アンタルヤからの帰り道、立ち寄った食堂で目にした鉄板の上の光景を今でも忘れられません。
じゅうじゅうと音を立てながら、肉とトマト、ピーマンが一体となっている。
これがトルコの家庭料理「サチカブリマ」。
初めてトルコを訪れたときから本気で美味しいと思ったトルコ料理のひとつです。
一口頬張れば、肉の弾力とスパイスの刺激が同時に押し寄せます。
濃厚でありながら決して重たくなく、野菜の酸味と甘味がしっかりと受け止めてくれるのです。まるで炎と大地が融合したかのような料理。
その横には山盛りのフレッシュな野菜。紫玉ねぎ、ミント、トマト、そして大ぶりに切られたピクルス。口の中が肉でいっぱいになった瞬間、野菜をかじれば瑞々しさが弾け、再び食欲が掻き立てられます。
昼の旧市街 ― 石畳を照らす陽光の中で
アンタルヤ旧市街「カレイチ」は、昼間と夜でまるで異なる表情を見せてくれる街です。
太陽が真上に差し掛かる頃、石畳の道を歩けば、白い壁の家々と赤茶色の屋根がまぶしく輝きます。路地の両側には小さな商店が並び、絨毯やランプ、トルコアイスを売る店が観光客を呼び込んでいました。
路面電車がチリンチリンと音を立てて通り過ぎる。旧市街の門をくぐると、時間が少しだけ巻き戻ったような錯覚を覚えます。市場ではスパイスやナッツ、乾燥フルーツが山積みにされ、立ち止まれば店主が「食べてみなよ」と親しげに差し出してくる。異国にいる自分を忘れ、どこか懐かしい温かさを感じる瞬間です。
ロカンタに腰を下ろして注文したのは、例によってスープ。
旅の間、自分は毎日のようにスープを飲んでいました。ひよこ豆のスープ、赤レンズ豆のスープ、時には牛テールを使ったものもある。どれも塩気は控えめで、素材の滋味が体に沁み渡っていく。炎天下を歩いた体が、器を持つとじんわりとほぐれていくのが分かるのです。
夜のカレイチ ― 黄金色に輝く街並み
夕方になると、カレイチは昼間の静けさから一転して、きらめきに満ちた舞台へと変わります。石畳の両側に並ぶレストランやバーは一斉に灯りを灯し、黄金色のイルミネーションが通りを包み込みます。テーブルに腰掛けた旅行者や地元の人々は、ワインやエフェスビールを片手に談笑している。グラスが触れ合う音、アコーディオンの演奏、時折聞こえる笑い声。そのすべてが街の鼓動のように感じられました。
とある通りを歩いていると、「Dubh Linn」というアイリッシュパブの看板が目に飛び込んできました。扉を開ければ、ギネスビールの泡立つ香りとロックの生演奏。アンタルヤの旧市街でアイルランドの空気を味わう不思議さに思わず笑ってしまいます。
別の路地では、頭上にブーゲンビリアが滝のように垂れ下がり、その下で観光客が写真を撮っていました。肩車された子どもが、ピンクの花を手に取ろうと必死に手を伸ばす。その姿に足を止めた自分は、旅先でふと訪れる温かな日常の瞬間を感じていました。
食と街が紡ぐ旅の時間
昼はスープを飲み、夜は肉と酒を味わい、さらに市場を歩いてはスパイスの香りに酔う。アンタルヤでの時間は、食と街歩きが常に寄り添っていました。サチカブリマの鉄板から立ちのぼる煙、ロカンタで啜るスープの湯気、そして夜のカレイチの灯り。そのひとつひとつが、旅の断片として心に刻まれていきます。
観光地としての華やかさだけでなく、そこに生きる人々の暮らしを垣間見られること。それこそが旅の醍醐味だと思います。アンタルヤはまさにその体験を与えてくれる街でした。
料理と街並み、そして人々の笑顔。その全てが一枚のモザイクのように重なり合い、ひとつの忘れがたい風景を最後まで作り上げていました。
次回はニューヨークです。お楽しみに。
この記事を書いた人

- 代表取締役
- 1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
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