永遠の都・ローマでの滞在も、いよいよ最終日を迎えました。
バチカンの神聖な静寂、そして真実の口やトレビの泉で触れた歴史の地層。

それらを十分に吸収した自分を待っていたのは、ホテルのすぐ側で偶然に出会った、極めて日常的で、かつ濃密な「表現」の現場でした。
路地裏に溢れ出す記憶。ローマの蚤の市で見つけた「命」の断片
最終日の朝、ホテルの外へ出ると、そこには昨日までとは違う景色が広がっていました。

通りを埋め尽くすように、無数の露店が立ち並ぶ蚤の市。
パリのアンティーク市場でも感じたことですが、ヨーロッパの人々にとって、古いものを愛で、次の世代へと繋いでいく文化は、もはや呼吸をするのと同じくらい当たり前のことのようです。

並べられているのは、洗練されたアンティークというよりは、もっと生々しい「生活の記憶」たち。ふと足を止めた店先で、自分は一つの強烈なオブジェに目を奪われました。
それは、見事な角を持った羊の頭蓋骨です。剥き出しの骨が放つ、荒々しくも潔い造形美。死してなお失われないその圧倒的な存在感(メメント・モリ)を前に、自分は思わずシャッターを切りました。

隣のテーブルに目を移すと、今度は色鮮やかなガラス細工や灰皿、名もなき職人が手がけたトレイが太陽の光を浴びて輝いていました。

さらに、その横には美術書やタトゥーのデザイン、歴史的な建築の記録を記した古本たちが山積みになっています。 「ここにあるのは、誰かの人生の一部だったものだ。」

それらが再び新しい持ち主を待ち、循環していく。この雑多なエネルギーこそが、ローマという街が数千年も「永遠」であり続けている理由なのかもしれません。
シチリアの情熱を噛み締める。――ローマ最後の夜、味覚の旅の帰着点
ローマを、そしてイタリアを去る最後の夜。

自分が選んだのは、これまでの旅路を総括するような、力強いシチリア料理でした。ミラノで食べたアジの揚げ物の記憶を抱えつつ、今夜はさらに深い、シチリアの「土」と「火」の香りを感じる食卓へ。

メインに注文したのは、ローズマリーの香りが鮮やかに立ち昇る、肉の煮込み料理(スペッツァティーノ)です。

じっくりと時間をかけて火を入れられた肉は、フォークを当てるだけで解けるほど柔らかく、その濃厚なソースには素材の旨味が極限まで凝縮されていました。

サイドに添えられた青菜のソテーは、少しの苦味が肉の脂を綺麗に流してくれる、完璧な脇役です。赤ワインの力強いタンニンが、この深い味わいをさらに深いところへと連れて行ってくれました。

そして、デザートには本場シチリアの魂とも言えるピスタチオとコーヒーのジェラートを。
ひんやりとした冷たさの後に広がる、ナッツの芳醇なコクとコーヒーの苦味。

それは、この旅で味わった甘美な瞬間と、クリエイティブに向き合う時の苦悩が混ざり合ったような、今の自分の心境に重なる味でした。
結び。―サンタンジェロ城の夜景
食事を終え、最後に向かったのはテヴェレ川沿いにそびえるサンタンジェロ城(聖天使城)でした。
人生2回目の訪問でしたが、夜の闇に浮かび上がる黄金色の城塞、そして橋の上に並ぶ天使たちの彫像。

その荘厳な景色を前に、自分はしばし言葉を失いました。
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