オアフ島・ノースショアでの濃密な時間を背に、自分は次なる目的地へ向かいました。 目指すは「ビッグアイランド」の愛称で親しまれる、ハワイ島。 ハワイ諸島の中でも最も若く、そして今なお成長を続けている島です。

ホノルルからの国内線移動。 正直なところ、少しの緊張感がありました。勝手知ったるオアフとは違う、未知の領域へ踏み込む感覚。
しかし、到着したヒロ国際空港に降り立った瞬間、その緊張は驚きへと変わりました。 「壁が……ない?」 空港の建物は、屋根こそあれど壁がなく、南国の風がそのまま吹き抜けるオープンエアな造り。
近代的なガラス張りの空港に慣れきっていた自分にとって、それは強烈なカルチャーショックであり、同時に「ここから先は、自然と共にあれ」というこの島の洗礼のようにも感じられました。
溶岩の道をジープで駆ける。効率を捨てて挑む、惑星のような風景
この広大な島を巡るには、タフな相棒が必要です。 レンタカーカウンターで鍵を受け取ったのは、無骨な魅力溢れる「Jeep(ジープ)」。 アクセルを踏み込み、走り出すと、車窓の景色は一変しました。

どこまでも続く一本道。その両脇を埋め尽くすのは、かつて地球の内部から噴き出した漆黒の溶岩(ラバ)です。 植物さえも拒絶するような荒涼とした大地。 けれど、その黒いキャンバスの上を走っていると、自分がちっぽけな存在に思えてくるのと同時に、不思議とエネルギーが満ちてくるのを感じました。
舌の上で溶けるルビー、スイサン(SUISAN)で知ったポキの真髄
ハワイ島に来たら、絶対に外せない味があります。 ヒロの港にある鮮魚店、「スイサン・フィッシュ・マーケット(Suisan Fish Market)」。 創業100年を超える老舗が提供するポキ丼です。 ショーケースには、獲れたての新鮮なマグロやタコが、醤油やごま油で輝きを放って並んでいる。

自分が選んだのは、大ぶりのマグロがゴロゴロと乗ったボウル。 一口食べた瞬間、言葉を失いました。 「……なんだこれは。」 冷凍されていない生のマグロは、ねっとりと舌に絡みつき、濃厚な旨みを残して溶けていく。 ごま油の香ばしさと、海藻の塩気、そしてハワイの醤油の甘み。

オアフ島で食べた料理も美味しかったけれど、ここのポキは「鮮度」という概念を書き換えるほどの衝撃でした。 港の風に吹かれながら、プラスチックの容器からかき込むその味は、どんな高級レストランのコース料理よりも贅沢で、野性的でした。
轟く滝と、噴煙を上げる大地。生きている地球と対峙する時間
腹を満たした後は、この島の「鼓動」を聴きに行きました。 まずは、ヒロの街からほど近い「レインボーフォールズ(Rainbow Falls)」。 巨大な洞窟に向かって、大量の水が轟音と共に落下していく。その水飛沫が太陽の光を浴びて、鮮やかな虹を架けることもあるという神秘的な場所。 水という物質が持つ、圧倒的な質量と破壊力、そして美しさ。

そして、ハワイ火山国立公園へ。 標高を上げていくと、空気はひんやりと冷たく、硫黄の匂いが鼻をかすめるようになります。 目の前に広がるのは、火口から立ち上る白煙と、見渡す限りのクレーター。

「ここには、地面の下に確かに『火』が流れている。」 溶岩トンネル(ラバ・チューブ)の中を歩くと、かつて灼熱のマグロが通り抜けた痕跡が生々しく残っていました。 破壊と再生を繰り返す地球のサイクル。

世界で最も活発な火山の一つであるこの場所は、単なる観光地ではない。ハワイの人々にとって、そこは火山の女神ペレが住まう、畏怖の念を持って語られる聖地。 自分は、ジープを降りてその広大な火口の縁に立ちました。

ふと、自分の足元にある地面が、数十年、あるいは数百年前まではドロドロに溶けた液体だったことに思い至ります。 破壊の後にしか訪れない、新しい大地の誕生。 効率化を追求し、最短距離で成果を求める現代社会において、この火山の歩みはあまりにも悠久で、そして不器用なほどに真っ直ぐでした。 一歩ずつ、溶岩を積み重ねて島を広げていく。

その泥臭いまでの執念のような「創造」のプロセスに、自分は経営者として、そして表現者として、深い共感を覚えずにはいられませんでした。
漆黒の回廊を抜けて、数千年の闇が語りかける記憶
次に向かったのは、かつて熱い溶岩が通り抜けた巨大な通り道、「サーストン・ラバ・チューブ(Nahuku)」です。 入り口を囲むのは、太古の森を思わせる巨大なシダ植物たち。一歩中へ足を踏み入れると、外の眩しい陽光は遮断され、ひんやりとした湿気と濃密な闇が自分を包み込みました。

数千年前、ここを数千度の溶岩が、轟音を立てて駆け抜けていった。 その圧倒的なエネルギーが通り過ぎた後の「抜け殻」の中に、今、自分は立っている。 壁面に触れると、溶岩が冷えて固まった独特の質感が、手のひらを通じて当時の「熱」を伝えてくるような錯覚に陥ります。

ラバ・チューブを抜け、再び目にした空の青さは、驚くほど鮮やかでした。 闇を知るからこそ、光の尊さがわかる。 火山の深淵に触れたことで、自分の中にある「伝えたい」という欲求が、より鮮明な形を成していくのを感じていました。

「便利になりすぎた世界で、こういう不器用な情熱に触れること。それこそが、一番の贅沢なのかもしれないな。」
噴煙の向こう側、ゆっくりと沈んでいく夕日を眺めながら、自分はまた一つ、この島から大切な教えを受け取った気がします。 キラウエアの鼓動は、今も自分の胸の奥で、静かに、けれど熱く響き続けています。

自分たちが日々追い求めているビジネスの成果や効率なんて、この悠久の時間軸の前では瞬きするほどの刹那に過ぎない。 そう思い知らされる心地よい敗北感が、そこにはありました。
ノスタルジーが薫るヒロの旧市街と、言葉に血を通わせるということ
ヒロの街並みは、どこか遠い記憶の底にある景色に似ていました。 100年以上の歴史を誇るレトロな建物たちが、今も現役で息づいている。

「OLD AMERICAN BAKERY BUILDING」と誇らしげに書かれた壁、パステルカラーの軒先、そして軒下でギターを奏でるストリートミュージシャンの音色。

ファーマーズマーケットに翻る星条旗を眺めながら、自分はこの街に流れる「時間の豊かさ」に圧倒されていました。 ここでは、効率化という言葉さえも、ゆっくりと流れる風の中に溶けてしまう

漆黒の磯で釣り上げた、極彩色の命たち
翌日、やはり釣竿を握らずにはいられません。
オアフ島の砂浜とは違う、ゴツゴツとした溶岩の磯へ。 足場は悪いけれど、その海の中には手つかずの自然が広がっています。

ルアーを投げ込むと、すぐに反応がありました。 釣り上げたのは、鮮やかな模様を持つ「ゴンベ」の仲間や、獰猛な顔つきをした「エソ」。 背景の黒い岩肌と、魚たちの極彩色のコントラスト。

「こんな色の魚が、この黒い海の下で生きているのか。」 ただ魚を釣るという行為以上に、この島の生命力そのものに触れたような感覚。

釣り上げた魚の体温が、手のひらを通じて自分の中に入ってくるようでした。

ヒロの街に、しっとりと夜が降りてきました。 窓の外からは、熱帯の植物たちが雨粒を弾く微かな音が聞こえてきます。

今回のハワイ島・ヒロでの滞在。 それは、効率やスピードを追い求める日常から自分を切り離し、もっと根源的な「生の熱量」に触れるための時間でした。 壁のない空港、喉を鳴らすジープの振動、そして火山の底から響く地球の鼓動。

明日は、この島の反対側、陽光が降り注ぐ「コナ」へと向かいます。 湿潤で静謐なヒロとはまた違う、荒々しくも輝かしい景色が待っているはずです。

旅は、まだ終わりません。 自分の言葉が、この大地のエネルギーを纏って、より深く、より鮮やかにあなたの元へ届くように。 自分はこれからも、このジープを走らせ続けようと思います。
次は、太陽と溶岩の街、コナでお会いしましょう。
この記事を書いた人

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- 1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
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