まぶたの奥に残る景色の先で 〜赤い橋と記憶の波を越えて〜

2025.03.30

朝、サンフランシスコのひんやりと澄んだ空気に包まれながら向かったのは、街角に佇む昔ながらのダイナー。

カウンターに腰を下ろすと、笑顔の店員さんがぽつりと、「パンケーキ焼きすぎちゃったんだけど、どう?」と声をかけてくださいました。

思わぬサービスに心もほどけて、出てきたのは大ぶりのパンケーキにバターとメープルがたっぷり染み込んだ一皿。ふわっとした食感と、甘さのなかにほのかに香ばしさが混ざるこの味こそ、旅の朝を彩るごちそうでした。

隣には、ハッシュドポテトの香ばしい山と、メキシカンスタイルのチリビーンズに覆われたエッグプレート。目を覚ますような刺激と、心を和ませる優しさが同居した朝食でした。

朝食を済ませ、ヘイト・アシュベリーの最後にヒッピーのお店に立ち寄りました。

罪と伝説の島アルカトラズの静けさ

さて港に向かい、いざフェリーで向かったのは「アルカトラズ島」。

この島の名を耳にしたことのある方は多いかもしれません。

そう、かつてアル・カポネをはじめとした凶悪犯が収容され、「絶対に脱獄できない監獄」として知られていたその場所です。

船上から振り返るサンフランシスコのスカイラインは、美しくもどこかもの悲しく、過去と現在が交差するような不思議な感覚に包まれました。

アルカトラズに近づくにつれて空気が変わり、無骨で苔むした建物が見えてきたとき、歴史が現在に語りかけてくるような、そんな錯覚すら覚えたほどです。

荒れた岩肌、崩れかけた監房、今も残る監視塔。ここには“自由”という言葉とは真逆の、重たい空気が確かに流れていました。

空と橋がつなぐ、過去と未来のはざま

クルーズはそのままゴールデンゲート・ブリッジへと航路を伸ばし、真下をくぐるという貴重な体験をさせてくれました。

赤銅色の橋脚が海と空を繋ぎ、雄大に、そして堂々とそびえる姿は、まさに“自由の象徴”。潮風が肌に触れ、空が近づいてくるような錯覚のなか、橋の下をくぐった瞬間、まるでひとつの儀式を終えたような感覚が心に残りました。

もうひとつの重要な架け橋がこの街にはあります。サンフランシスコとオークランドを結ぶ「サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジ(通称:ベイブリッジ)」です。

どこかで見たことあるシルエットと思ったら僕の大好きなバンド、テデスキ・トラックス・バンドのライブアルバム、「ライヴ・フロム・ザ・フォックス・オークランド」のジャケットに使われていました。

サンフランシスコが持つ二面性と、その奥行きを象徴する風景として、記憶の中に静かに刻まれました。

晴れ渡る空、白い雲、静かな海。そしてそのすべてを貫く一本の線、見上げる者の過去を包み、未来へそっと背中を押してくれるような存在でした。

子どもの頃のテレビの記憶が目の前に“フルハウス”のあの場所へ

陸に戻った後、アラモ・スクエアへ。

ここにはドラマ『フルハウス』のオープニングに登場する“ペインテッド・レディーズ”と呼ばれるヴィクトリアンハウスが並びます。青空のもと、芝生に腰を下ろして眺めるカラフルな家並み。まるで童話の中に入り込んだような、不思議な時間が流れていました。

目の前の風景は、過去にテレビの中で何度も見たはずなのに、こうしてリアルな空間として現れると、胸の奥がきゅっと掴まれるような感覚になります。懐かしさと新しさが交錯するこの場所に立てたことに、ただただ感謝しかありませんでした。

世界一のカーブをなぞるロンバード・ストリートという“曲がり道”

続いて向かったのは“世界一カーブがきつい坂道”として名高い「ロンバード・ストリート」。

この坂道、ただ見物するだけでも面白いのですが、実際に車で挑んでみると、その複雑さに驚かされます。曲がるたびに左右へと視線が揺れ、ゆるやかに、しかし確かに街を下っていく。運転というより、街と呼吸を合わせるような不思議なドライブでした。

カーブの合間には、カメラを構える観光客たちが笑顔で手を振ってくれます。街が、そこに集う人々とともに形づくられていることを、しみじみと感じる瞬間でした。

晴れ間の贈り物—赤い橋

あれほど立ち込めていた霧がゆっくりと引き、空の青が徐々に顔を出し始めました。晴れ間が広がるその瞬間、どうしてももう一度見たくなって、ゴールデンゲートブリッジを目指して車を走らせました。

橋のふもとに着くと、あの赤いアーチが光をまとって、空の青と鮮やかなコントラストを描いていました。シャッターを切る手が自然と動き、ただの一枚の写真が、旅の中の特別な記憶になっていくのがわかりました。

ゴールデンゲートブリッジは、1937年に開通した長さ約2.7kmの吊り橋で、サンフランシスコとマリン郡を結んでいます。完成当時は世界最長の吊り橋として話題を呼び、今ではこの街の象徴的存在として、世界中の人々を魅了し続けています。正式な橋の色は「インターナショナル・オレンジ」と呼ばれる特注色で、霧の多いこの地域でも視認性が高く、周囲の自然風景とも美しく調和しています。

そんな橋の全景を、晴れ間の下でしっかりと写真に収められたことは、この旅の中でも忘れがたい一幕となりました。

太平洋に沈む陽が照らしたもの

夕暮れ時、足を運んだのは太平洋に面したビーチ。

夕陽が少しずつ地平線に近づくにつれ、空の色が変化していきます。

オレンジ、ピンク、薄紫、そして静かな青へと移ろう空。そのグラデーションは、言葉では言い尽くせない美しさでした。

これまでの旅の景色がゆっくりと脳裏をよぎります。アルカトラズ島の重たさ、ゴールデンゲートの開放感、懐かしい“あの家”の姿。すべてが、今日という1日の中に詰め込まれていたことが、今になってじんわりと胸に広がっていきました。

目の前の水平線は、どこまでも続いているように見えました。

そしてその風景が、今この瞬間を生きていることの意味を静かに教えてくれているように感じたのです。

風はまだ、自由の匂いを運んでくる

サンフランシスコという街は、ほんとうに多層的な表情を持っています。

過去の歴史、ヒッピーカルチャー、豊かな自然、そして“自由”という名の風。

この一日で触れた数々の瞬間たちが、きっとこの先の人生のどこかで、ふとした拍子に香り立つのだろうと感じました。

だからこそ、自分はきっとまたこの街に戻ってくることになるはずです。

自由の風を、もう一度、胸いっぱいに吸い込むために。

この記事を書いた人

TAKASHI YAMANAKA
TAKASHI YAMANAKA代表取締役
1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
▪趣味:旅行 ギター 読書 キャンプ 釣りとか…
7年前に始めたBLOGも600記事を超えました。
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この記事を書いた人

TAKASHI YAMANAKA

CEO

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