夕暮れが落ち着きはじめたころ、自分はサンフランシスコのテンダーロイン地区へと足を運びました。

観光マップなどにも「絶対に立ち入るな」と書かれてあるほど、危険。
治安が悪いとされるこのエリアには、確かに独特の緊張感と、それを上回る濃密なリアリティが息づいています。

交差点に立つと、道ばたにはマットレスが敷かれ、毛布にくるまる人々、薄暗い路地の奥からはホームレスの怒鳴り声や、薬物の取引とおぼしきやりとりが見え隠れしていました。

ロサンゼルスのスキッド・ロウもすごかったですが、ロサンゼルスのほうが可愛く感じるほど、サンフランシスコのテンダーロインのほうが「危険」を感じました。

↑※トランプ就任前夜の落書き。
そんなテンダーロインの一角、小さなメキシカンタコスの店に入ると、そこには別世界が広がっていました。店内のラジオからはラテンの音楽が流れ、ビール片手に笑い合うカップル。

メニューから「カルネ・アサダ・タコス」と「コロナビール」を注文しました。香ばしく焼かれた牛肉の香りとパクチーの風味が鼻をくすぐり、ひと口目で心が少し緩んでいくのを感じました。

大好きなアパレルブランドの名前にもなっているこのエリアが、一体どんな街なのか。とても気になっていたので、車をストリートパーキングへ駐車し、ストリートを歩きます。

ネオンが照らす反骨の魂――ザ・グレイト・アメリカン・ミュージック・ホールへ
食後、ネオンサインに誘われるように向かったのは、「The Great American Music Hall」。この会場の名を聞くだけで、60年代〜70年代のサイケデリックロックの香りが蘇ってくる方もいらっしゃるのではないでしょうか。この夜の演目は「Jerry’s Middle Finger」。グレイトフル・デッドへのトリビュートバンドとして、非常に評価の高い存在です。

Jerry’s Middle Fingerのライブ会場へ向かうと、すでに多くの人たちが列を作って並んでいました。その光景に、思わず足を止めてしまいました。
会場の外には、色とりどりのタイダイシャツに身を包んだ観客たちが列をなし、70年代のフラワームーブメントをそのまま現在にタイムスリップさせたかのような、自由で奔放なエネルギーに満ちていました。

ある女性はギターを持ち込み、その場で弾き語りをはじめ、通りがちょっとした野外セッション会場のように変化していました。

鮮やかなタイダイ柄のシャツ、広がった裾のフレアパンツ、革のフリンジ付きジャケットや、ビーズアクセサリー。まるで60年代のサマー・オブ・ラブにタイムスリップしたかのような装いでした。

ある女性は、カラフルなタイダイTシャツにジーンズ、そして手には缶ビールを持っていました。髪はゆるくウェーブがかかっていて、肩からかけたバッグは編み込みのマクラメ素材。ひと目見て「あの時代が好きなんだな」と伝わってきます。

また、背中に「GRATEFUL DEAD SHAKEDOWN」と大きく書かれたレザーベストを羽織った男性の姿もありました。長髪に無精ひげ、そして真っすぐな立ち姿。彼はもう何十年もこのカルチャーとともに生きてきたのでしょう。

オーバードーズか。救急車で一名運ばれていきました。
列に並ぶ人たちは、単なる“コスプレ”ではなく、60年代〜70年代のカルチャーを今も愛し続けているように見えました。ファッションというより、むしろ「生き方」そのものがそこに表れていたのだと思います。
サンフランシスコの夜に現れたこの列は、現代に息づくヒッピー・スピリットを感じさせてくれる、なんとも不思議で魅力的な光景でした。
テンダーロインの闇と光、そしてその狭間にいる人々
ライブが終わり、再び街に出ると、テンダーロインの夜は静かに、しかしどこか荒々しく続いていました。あるホームレスの男性と目が合い、軽く会釈を交わすと、彼は「グレイトな夜か?」と笑いました。

サンフランシスコの中心にありながら、社会の縁に生きる人々が集うこのエリア。だがその中にこそ、地に足のついた真実があり、日々の営みがある。

決して大体的にマップで取り上げられるエリアではないだろうが、観光地の華やかさとは異なるもう一つのアメリカの表情を、自分はこの夜、確かに見たのです。

次回は、仕事も絡めて世界TOPのITメッカである、シリコンバレーへ。
この記事を書いた人

- 代表取締役
- 1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
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