ベイルートの朝はスパイスで目覚め、森の中でメディテーションで整う午後

2025.07.17

ベイルートの街角にある「Wooden Bakery」の看板が目に入ったとき、自分の五感がぱっと目を覚ました。

パンの焼ける香ばしい匂い。オーブンの奥で舞う火のゆらぎ。

粉とチーズとオリーブの香りが絶妙に混ざり合って、ただの朝食とは思えませんでした。

焼きたてのマヌーシェ(za’atarのスパイスが練り込まれたラップ)を頬張る。サクサクの生地にしっとりと絡むハーブオイル。

野菜の酸味とチーズの塩気が、喧騒のベイルートとは裏腹に、とても静かで穏やかな時間を生み出してました。

色と香りに誘われて。昼の食卓に集う、笑顔の旋律

昼になれば、再び香りが旅人の鼻先をくすぐる。訪れたのは、山間のレストラン。噴水の音と、風に揺れる葉のさざめきに包まれながら、大きな屋根の下でひとつの長い食卓を囲む。

運ばれてきたのは、これでもかというほどにボリューム満点のレバニーズプレート。チキンケバブ、ラム、キョフテ、そして表面が真っ赤に染まるようなスパイスパン。パセリと玉ねぎがたっぷりと散りばめられ、どれもが香ばしく焼かれてました。

少し戸惑いながら手に取ったのが、まるでタルタルのような生肉。おそらく羊。香草と唐辛子でしっかりと味付けされていて、驚くほどやわらかったです。ミントの葉と大根、唐辛子のコンビネーション。

一緒にいた若者たちも皆、笑っていた。食事は言葉を超えて人をつなげる。まさにそれを象徴するような昼のひとときでした。

化石に触れる。レバノンの地層に眠る1億年前の時間

午後は海沿いの町へ。ベイルートから車で北へ少し走った場所にある、化石博物館を訪れた。

薄暗い石造りの室内に一歩足を踏み入れると、目の前に並ぶのは、信じられないほど保存状態の良い古代魚や昆虫、植物の化石たち。彼らは、1億年以上前のレバノンの海に生きていた存在。

ガイドの男性が丁寧に説明をしてくれます。彼の手元のパンフレットには「Pierre’s Fossils」と記されてていました。まるで誇りを持って我が子を紹介するように、ひとつひとつの化石に語りかけるような姿勢が印象的でした。

中でも圧巻だったのは、メガロドンの歯の化石。手のひらを優に超えるその大きさと形に、かつての海がどれだけ巨大だったかを思い知られます。

化石とは、時間を抱えたまま今に存在している奇跡なのだと、しみじみ思いました。

ベイルートの街角で見つけた、静かなる瞑想の時間

翌日は、車に揺られて山を目指します。目指したのは「Barouk Cedar Forest」。そこはレバノン杉の森、まるで神話の中に迷い込んだような世界。

チケット売り場で簡単な説明を受け、中に足を踏み入れた瞬間、時間の流れが変わった気がした。木漏れ日が地面に円を描き、ふわっと杉の香りが鼻をくすぐります。

森の中に吸い込まれるように、音が消えていく。

ああ、都市の喧騒からずいぶんと遠ざかってきたんだな、と実感した。

その日の目的は、ここで「メディテーション」をすることだった。レバノン杉に囲まれて、ただ静かに、自分を置きます。

地面に腰を下ろすと、驚くほど冷たくて気持ちよかった。やわらかな苔と落ち葉のクッション。背筋を伸ばして目を閉じると、遠くの鳥のさえずりと、風が杉の枝を揺らす音だけが、耳に届けてくれます。

深く吸って、ゆっくり吐く。呼吸を意識していると、ふと胸の奥にしまい込んでいた雑音が、ひとつずつ消えていくのが分かりました。

思考がゆるやかにほどけていく感覚。ああ、自分はこんなにも、急いで生きていたのかもしれないな…なんて、ぼんやり思いました。

同じように輪になって座っていた仲間たちも、それぞれの呼吸に身を委ねていました。誰も何も言わない。でも、そこには確かに共有された静寂がありました。

杉の木々に守られるようにして、ただ「ある」ということを感じる。

15分のメディテーションが終わった後、誰もがゆっくりと目を開けて、何も言わずに微笑んでいた。心が整うって、こういうことなのかもしれません。

この国に「平穏」という名のリズムを聴いた

レバノンという国に、どんな印象を持っていただろう。内戦、宗教、政治……確かにそれらもこの国の現実ではある。でも、自分が感じたレバノンは、それだけじゃなかった。

笑顔が集う食卓。祖先が遺した化石の記憶。焼きたてのパンの香り。風に揺れるレバノン杉。言葉では伝えきれない「空気感」が、この土地には確かにありました。

旅とは、場所を移動することではない。感覚の窓を開けることだ。レバノンとベイルートで自分は、たくさんの窓を開けることができた。

次回は旧市街地からビーチサイドでの友達のバースデーパーティーの模様をお伝えします。

この記事を書いた人

TAKASHI YAMANAKA
TAKASHI YAMANAKA代表取締役
1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
▪趣味:旅行 ギター 読書 キャンプ 釣りとか…
9年前に始めたBLOGも750記事を超えました。
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TAKASHI YAMANAKA

CEO

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