メキシコ・チアパスでの濃密な時間を終え、自分は再び北へと向かいました。目的地はハワイですが、今回はサンフランシスコでの18時間という長いトランジット。
いつもなら迷わずレンタカーの鍵を受け取るところですが、今回はふと思い立って、初めて「BART(バート)」という名の電車に身を委ねてみることに。

移動という「作業」を、あえて自分の手から離してみる。 すると、見慣れたはずの街が、まったく違う表情で語りかけてきました。

空港の喧騒を抜け、地下ホームへと降り立つ。冷んやりとした空気が、メキシコの土の匂いを少しずつ洗い流していくような感覚。
目の前に滑り込んできたBARTの、どこか無機質な鋼鉄の質感は、ここが最先端のテクノロジーと混沌が共存する西海岸であることを教えてくれました。

ガタゴトと、独特の揺れ。電車の窓は、レンタカーのフロントガラスよりもずっと大きく、そして無防備です。 線路沿いに並ぶ、色褪せたグラフィティ。

高層ビルの隙間から差し込む、刺すような鋭い陽光。 「自分」はただ、流れていく景色を眺めていました。 ハンドルを握っているときには決して見ることができなかった、街の「裏側」や、そこに住む人々の何気ない生活の断片。

Civic Center駅で地上に降り立つと、そこにはサンフランシスコらしい、威風堂々とした建築物が並んでいました。重厚な石造りの建物と、高く掲げられた星条旗。メキシコのあの温かな、けれどどこか混沌とした空気とは対照的な、研ぎ澄まされた秩序。

旅というものは、目的地に着くことだけが目的じゃない。 このトランジットの18時間、そしてBARTに揺られる30分。その「間」にある時間にこそ、新しいアイデアの種が落ちています。

効率化を追求する自分たちが、なぜわざわざ「旅」に出るのか。 それは、効率化によって生み出した時間を、こうした「無駄」とも思える豊かな体験に投資するためなんだと、車窓に映る自分の顔を見ながら改めて感じていました。
坂道の記憶と、喉を通り抜ける「新しいメキシコ」の香り
サンフランシスコといえば、やはりあの急な坂道です。 Union SquareからPowell通りを歩けば、ガタガタと音を立てて走るケーブルカーに出会います。レトロな外観に、満面の笑みでしがみつく観光客たち。その光景は、この街が守り続けてきた歴史と、新しさを追い求めるパッションが混ざり合った、この場所だけのシンボル。

坂を上り、街の鼓動を肌で感じながら歩いていると、不意に鼻腔をくすぐる香りがありました。 それは、数日前まで自分がいたメキシコの、あの懐かしいスパイスの匂い。 誘われるように入ったのは「Chipotle(チポトレ)」。 アメリカで絶大な人気を誇るメキシカン・グリルですが、今の自分には特別な意味を持っていました。

注文したのは、ボウルにたっぷりと盛られたチキンと豆、そしてワカモレ。 チアパスの村で、お母さんたちが一枚一枚丁寧に焼き上げてくれた、あの「手のひらの温度」が残るトルティーヤとは、確かに対極にある存在かもしれません。

システマチックに、驚くほど効率的に提供される食事。 けれど、一口食べた瞬間、口の中に広がったのは、確かにメキシコの風でした。

目の前のボウル一杯の食事。それがこれほどまでに人々の日常を豊かにし、自分のような旅人の心を一瞬でメキシコへ引き戻してくれる。 それは、徹底的な効率化の先にある、一つの「愛」の形なんじゃないか。 そんなことを考えながら、自分は夢中でスプーンを動かしていました。

琥珀色の泡が弾ける空港の片隅で、静かに翼を休める時間
再びBARTに揺られて空港へと戻り、ターミナルの中を歩く。 18時間の自由時間は、あっという間に過ぎ去っていきました。

ハワイ行きの便を待つ間、自分はサンフランシスコ・ジャイアンツのクラブハウスを模したラウンジに腰を下ろしました。

運ばれてきたのは、琥珀色に輝くビール。 グラスの縁で弾ける泡を見つめながら、搭乗券に目を落とします。 「SFO to HNL」。 メキシコの熱い風、サンフランシスコの霧、そしてこれから向かうハワイの青い海。 自分の人生は、こうして点と点を繋ぎ合わせるように続いていく。

ビールの冷たさが喉を通り、心地よい疲れが身体を包み込む。
ラウンジの窓の外では、夕暮れに染まる翼が静かに出発の時を待っていました。 サンフランシスコ。わずか18時間の滞在だったけれど、電車から見た街の横顔や、坂道の風、そして効率化の先にある温もりに触れたことで、自分の中の「言葉」がまた一つ、磨かれた気がします。

次は、いよいよハワイ。
帰り道に寄った少し長めの休憩ポイントです。
この記事を書いた人

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