空を見上げて歩けることが当たり前の世界へ。

2024.09.10

赤土を巻き上げながら、一人バイクにて向かった。

シェムリアップの郊外、自然に囲まれた一角に静かに佇む「アキラ地雷博物館」。

この場所は、カンボジアの長い戦争の傷跡と、それを乗り越えようとする人々の物語が詰まっています。

ここで出会うのは、カンボジアの地雷撤去の象徴であり、国際的なヒーローでもあるアキラ氏です。

写真:アキラ氏

しかし、彼の活動には知られざる側面があり、単に英雄と呼ぶには複雑な背景が存在します。

少年兵から地雷撤去の第一人者へ

アキラ氏はカンボジア内戦時代、わずか5歳で両親を失い、子どもながらに戦場に放り込まれました。彼はクメール・ルージュの少年兵として兵士となり、多くの地雷を設置する任務に就いていました。

まだ幼かった彼には、戦争の理不尽さも、地雷がどれほど恐ろしい兵器かも理解する余裕はなかったのです。自らの手で数え切れないほどの地雷を埋め、その行為が後に無数の命を脅かすことになると知るのは、戦争が終わった後のことでした。

戦争が終結し、アキラ氏は少年兵としての過去を引きずりながらも、生まれ育った地を地雷から解放することを決意します。その決意は単なる贖罪ではなく、自分自身の過去を掘り返し、直視するための行為でもあります。彼が撤去しているのは、かつて自分が埋めた地雷そのもの。過去の自分との対話であり、傷つけた人々への果てしない償いでもあるのです。

世界基準の撤去ルールに則らない理由

アキラ氏の地雷撤去活動には、国際基準に従わない独自の方法があります。通常、地雷撤去は国際的な安全基準に従い、最新の装備と慎重な手順で行われます。しかし、アキラ氏はこれとは異なり、極めてシンプルな道具を使い、現場の判断で地雷を取り除いていきます。

その姿は危険を伴うものであり、彼自身も幾度となく命の危険と隣り合わせでした。それでも、彼がこの方法を選ぶ理由は明確です。それは、彼が地雷の設置者であり、どこにどのように地雷が埋められているかを肌で知っているからこその判断なのです。

アキラ氏は、過去に自ら埋めた地雷の特性や場所、地形の変化を理解しており、その知識を頼りに活動しています。また、国際基準に従うことは、時間や費用の面で多くの制約を生むこともまた事実。

カンボジアの現実には、すぐにでも危険を取り除かなければならない村や畑が無数にあります。そのため、迅速かつ現地の実情に即した方法で地雷撤去を行うことが最優先となるのです。

地雷撤去の現場で見たもの

博物館の中には、アキラ氏がこれまで撤去してきた無数の地雷や爆発物が並べられています。見る者に圧倒的な存在感を与えるその一つ一つが、かつて人の命を脅かし、今もなお多くの人々の心に残る恐怖を象徴しています。彼が地雷を手で掘り起こしている姿を記録した写真は、決して誇張ではなく、命がけの作業そのものです。

展示されている地雷の種類は、国際社会から供給されたさまざまな国のものであり、カンボジアがいかに多くの国際的な争いに巻き込まれてきたかを物語っています。ソビエト製、中国製、アメリカ製の地雷が一列に並び、それぞれがどのように機能し、どれほどの破壊力を持っているかが詳しく説明されています。

その中には、まるで玩具のように小さい地雷もあり、これが戦争の犠牲者の命を奪ってきた現実に直面すると、言葉を失います。

義足が語るもの—地雷が残した傷跡

展示室の一角には、撤去された地雷だけでなく、地雷によって足を失った人々の義足が無造作に積み重ねられています。それは単なる医療機器ではなく、過去の痛ましい出来事と向き合う無言の証言者です。この博物館を訪れる人々は、その義足がかつての持ち主の一部であったことを感じ取ります。

アキラ氏は、これらの義足を見ながら、「地雷はまだ多くの命を脅かしている」と繰り返し語ります。彼にとって、地雷撤去は単に危険を取り除く作業ではなく、命の再生を支援することでもあります。地雷によって生活を奪われた人々が、再び立ち上がり、生きる力を取り戻すために、アキラ氏は今日も現場に向かうのです。

アキラ氏が残す未来への希望

アキラ氏の活動は、戦争の過去を背負いながらも未来を見据えるものであり、多くの人々に希望を与えています。彼が語るのは、地雷を撤去することによってその土地が再び農地として使われ、子どもたちが安全に遊べるようになること。そのために、彼はこれからも撤去の現場に立ち続けます。

彼の行動には、一人一人が自分の過去と向き合い、それを乗り越えるために何ができるのかを問いかける強いメッセージが込められています。アキラ地雷博物館を訪れることで、その問いに正面から向き合う機会を得たのです。

終わりなき挑戦の中で

アキラ地雷博物館を後にする時、胸に去来するのは、この場所が決して終わった過去を見せるための場所ではなく、現在進行形の戦いの一部であるという現実です。アキラ氏の活動は、これからも続きます。

彼の手で掘り返される地雷の数が一つずつ増えていくたびに、その土地には新たな未来が生まれます。

地雷撤去の現場で汗を流し続けるアキラ氏の姿は、まさに命の灯火を消さないための闘いそのものです。過去に埋めた地雷を、自分の手で一つずつ取り除き、次の世代のために道を切り開くその姿に、心を打たれました。

彼のその勇気ある覚悟と行動に感銘を受け、弊社は微力ながらアキラ氏に対して支援を行うことを、このカンボジアの地にて決意しました。

カンボジアの地が安全と平和を取り戻すその日まで、アキラ氏と彼の仲間たちは、この挑戦を終えることなく歩み続けるでしょう。

 

〜空を見上げて歩けることが当たり前の人たちへ〜

一人で下を見ながら未来のために戦っている人が居る。

今日はどのくらいの時間、下に目をやりスマホを見ましたか。

空を見上げながら、歩ける環境に感謝。

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この記事を書いた人

TAKASHI YAMANAKA
TAKASHI YAMANAKA代表取締役
1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
▪趣味:旅行 ギター 読書 キャンプ 釣りとか…
7年前に始めたBLOGも600記事を超えました。
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CEO

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