モンゴル後半の旅は、首都ウランバートルを少し離れ、雄大な草原にそびえるチンギス・ハーン像を目指すところから始まりました。広い空の下、車窓から見えるのはひたすらに続く大地と、ぽつりぽつりと点在する白いゲル。都会を離れれば離れるほど、時間の流れは緩やかになり、まるで過去へと戻っていくかのような感覚に包まれます。
高さ40メートルを超えるその銀色の像は、近づくにつれ圧倒的な存在感を放ちます。陽光を反射する姿は、草原の中で唯一無二のランドマークであり、まるで歴史そのものが形を持ち、今ここに蘇ったかのようでした。近づけば近づくほど、その眼差しの鋭さとたたずまいの力強さに飲み込まれ、自分も気づけば背筋を正していました。
展望台に立つと、像の背後には見渡す限りの草原が広がり、その中に点々とゲルが並んでいます。チンギス・ハーンが見据える先にはどんな未来が広がっているのだろうか。自分も思わず遠い地平を眺め、静かな時間に身を委ねました。あの広大な視界は、今も脳裏に焼き付いて離れません。
鷲の眼差しに試される
チンギス・ハーン像の麓では、黄金の瞳を持つ大鷲との出会いも待っていました。
観光客向けに鷹匠体験ができるブースがあり、分厚い革手袋をはめ、腕を差し出すと、その瞬間に大鷲が羽ばたきながら降り立ちました。想像以上の重量感がずっしりと腕にのしかかり、体の芯まで響きます。羽の一振りで風を切り裂く音が聞こえ、その圧倒的な力強さに思わず息を呑みました。
鷲の黄金の瞳に見つめられると、まるで自分が試されているかのような気持ちになります。その眼差しには野生の誇りと威厳が宿り、ただの展示やアトラクションではないことを思い知らされました。自然と共に生きるとはどういうことか、遊牧民が動物と共存してきた意味とは何か。短い時間の中で、その答えの断片に触れたように感じました。
戦士の鎧を身にまとう
続いて訪れたのは、遊牧民族の歴史と文化を体感できる展示施設です。そこでは実際に甲冑を身に付けることができ、モンゴルの戦士たちの気分を味わえました。鉄と革で作られた鎧は想像以上に重く、身に付けると自然と身体が引き締まります。兜をかぶり、盾と剣を手にした瞬間、鏡に映る自分はもう普段の自分ではなく、戦場に立った兵士そのものでした。
仲間とともにポーズを取り、記念撮影をしたときの高揚感は今でも鮮明に覚えています。不思議と胸の奥から勇ましい気持ちが湧き上がり、まるでタイムスリップしたような感覚でした。
リアル「モンスターハンター」の世界観でした。笑
ラクダの背に揺られて
その後は草原を進み、ラクダ乗りの体験へと向かいました。モンゴルといえば馬のイメージが強いですが、ここでは二つのこぶを持つフタコブラクダに乗せてもらいました。
高い背中にまたがると、最初はバランスを取るのに必死で少し緊張しました。しかし、ゆったりとした歩みに身を任せているうちに、不思議と心が解きほぐされていきます。
ラクダの視線に合わせて草原を見渡すと、人間の目線よりも高い位置から広大な景色が広がっていました。乾いた風が頬を撫で、土の匂いが漂い、遠くには険しい岩山が連なります。
その風景の中に自分の存在を重ねると、日常の小さな悩みや忙しさなど一瞬で吹き飛び、ただ自然に包まれていることの幸福を感じました。
果てなき大地を歩く登山ツアー
旅の後半には、登山のようなツアーにも参加しました。バスを降りてしばらく歩くと、目の前には岩肌がむき出しの山々が広がり、そこに小さな道が続いていました。
ゴツゴツとした岩を踏みしめ、一歩一歩を確かめながら進みます。息は切れ、汗が額を流れ落ちても、不思議と足は前へ前へと進んでいきました。
途中で立ち止まって振り返ると、草原の中に点々と並ぶゲルが小さく見え、遠くの空と地平線がひとつにつながって見えます。その眺めが「ここまで登ってきた」という達成感を与えてくれるのです。自然と笑みがこぼれ、また一歩踏み出す勇気をくれました。
やがて頂上に近づくと、お寺のような施設が静かに姿を現しました。入口にはカラフルな旗が掲げられ、風にたなびく音が心地よく響きます。
境内にはマニ車が並び、人々が一つひとつを丁寧に回して祈りを捧げていました。中に入ると色鮮やかな仏像や壁画が並び、静寂の中で僧侶の読経が低く響き渡ります。そこに立つだけで、自分の心が自然と落ち着いていくのを感じました。
岩山の上から見渡す景色はまさに絶景。遥か彼方まで広がるモンゴルの大地を前にすると、人間の悩みごとなどほんの些細なことのように思えてきます。広がる空の下で深呼吸をすると、胸の奥まで澄んだ空気が入り込み、心が洗われるようでした。
モンゴルの大地に刻まれた記憶
こうして過ごしたモンゴルの後半は、文化と自然が交わる瞬間の連続でした。チンギス・ハーン像が放つ威厳、大鷲の瞳が映し出す野生の力、甲冑を身にまとうことで感じた歴史の重み、ラクダの背から見えた草原の広さ、そして頂上で出会った祈りの場。そのどれもが、ただの観光体験を超えて、自分の中に深く刻まれました。
モンゴルの大地は、美しいだけではなく、訪れる者に問いかけてきます。「あなたはどう生きるのか」と。その問いかけに明確な答えを持ち合わせてはいませんが、確かにこの地で得た感覚は、自分のこれからの生き方に影響を与えるものだと思います。
旅は風景を楽しむだけではなく、心の奥に新しい視点をもたらしてくれるものです。モンゴルでの後半の時間は、まさにその象徴でした。果てしない草原と大空に抱かれたあの日の記憶は、これからもずっと自分の中で生き続けていくはずです。
この記事を書いた人

- 代表取締役
- 1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
▪趣味:旅行 ギター 読書 キャンプ 釣りとか…
9年前に始めたBLOGも750記事を超えました。
最新の投稿
TRIP2025-08-20果てしない草原と祈りの空へ ― モンゴル後半の旅
TRIP2025-08-08風を抱きしめた日、モンゴルの空が開いた瞬間
TRIP2025-07-29見送られる背中に、ドイツの風が吹いた〜フランクフルトの記憶〜
TRIP2025-07-22フランクフルトの朝 〜ドイツで迎えた、路地に響く暮らしのリズム〜