かすかに潮の香りが混じる風が、古びた石のトンネルをすり抜けていきました。
そこに刻まれていたのは、何百年も前から積み重ねられてきた「時間」そのものでした。
今回、自分が足を運んだのはレバノン・ベイルートの旧市街地に残る古代遺跡のひとつ。「アルファベット発祥の地」としても知られており、フェニキア時代からローマ時代にかけての文化が、まるでそのまま保存されたかのように今も息づいていました。
アーチを描く天井、崩れかけた石の回廊、かすかな光が差し込む小窓。ローマ人たちがこの地を歩き、ラテン語を広めた頃、まさにここにも同じような空気が流れていたのでしょう。
なんとこちらのセンターの上の丸い部分を外すとすべての建物が崩れる仕組みになっているとか。
まるで映画「インディー・ジョンズ」の世界。
地中海の光が注ぐテーブルの上で
遺跡の余韻を残したまま、海辺にあるそのレストランでランチをいただきました。
テラス席からは穏やかな港が広がり、波の音と共にカモメの鳴き声が風に混ざって聞こえてきます。チェーンと素焼きの壺が装飾された空間は、日常をほんの少し非現実に変えてくれる場所でした。
この日注文したのは、レバノンならではのメゼ(前菜の盛り合わせ)と、グリルしたシーバス。
レモンとオリーブオイルの香りがふわっと広がり、口に含んだ瞬間に柔らかな旨味が広がります。まるで海を食べているような感覚でした。
オーナーが趣味で集めたという装飾品の展示室にも案内していただきました。赤い石壁に囲まれた小さな空間には、アステカやオスマン、さらにはビザンティン様式のアクセサリーが所狭しと並んでおり、レストランというよりはもはや博物館のようでした。
「とっておきのものを見せてあげる。」とオーナーが見せてくれた、現代的な展示スペースに古代ビーズのネックレスや装飾品が並んでいました。
そのどれもが色とりどりで、まるで現代のアートのような存在感。思わず目を奪われます。
実はこれらはすべて、海辺のレストランのオーナーが個人的に収集したものだそうです。
そして、夜ははじける。
夜になると、風がすっかり変わります。
空が濃紺に染まり、波がざぶんと音を立てる頃——この夜は特別でした。
レバノンJCI(国際青年会議所)のナショナルプレジデントであるmarieの誕生日会が、ビーチサイドのレストランで開かれ、自分たちも招待されておりました。
華やかな照明と音楽で演出され、まるで映画のワンシーンのような空間に変わっていました。
会場には美しいドレスを身にまとった女性たちが次々と現れ、ワイングラスを片手に談笑されている光景がとても華やかでした。
乾杯の合図とともに歌声が響き渡り、まるで即席のカラオケ大会のような雰囲気に。笑
気づけば自分もステージに引っ張り上げられ、波音に合わせてマイクを握っておりました。
波と笑顔と、海辺の夜に溶けていく
印象的だったのは、この地の人たちのあたたかさでした。
そして夜も更け、潮風がほんの少し冷たくなってきたころ。
自分はサンダルを脱ぎ、裸足のまま砂浜に立ち、片手にはマルガリータを。
海の音に包まれながら、胸の奥でなにかがゆっくりとほどけていくような、そんな感覚がありました。
アルファベットの始まりの地で、言葉を探していた。
ベイルートの旧市街と海辺のレストラン。
どちらも、時の流れと人の温もりが織りなす、とても静かな「奇跡」のような場所でした。
「世界は、言葉から始まったのよ」
ふと誰かがつぶやいたその言葉が、今も頭の中で響いています。
レバノンという場所で、言葉を失い、そしてまた新たな言葉を見つけた気がしています。
この記事を書いた人

- 代表取締役
- 1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
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