アメリカから帰国しトランプ2.0政権が正式に幕が開けました。
滞在期間中、広大な自然と活気ある都市をめぐる日々は、かけがえのない体験となりましたが、同時に、アメリカという国がいま、大きなうねりの中にあるという現実も肌で感じました。
帰国後、イギリスの新聞『The Guardian』に掲載された、ジャーナリストで社会批評家のナオミ・クラインによる記事「The rise of end times fascism(終末論的ファシズムの台頭)」を読みました。
この記事は、トランプ大統領とその再登場(いわゆるトランプ2.0)を支えるシリコンバレーの富裕層への厳しい批判が込められたものでした。
彼女の指摘は明確でした。近年のアメリカの極右運動は、いよいよ「終末論的」な色彩を帯びてきたと。
「自分たちの価値観や文明が崩壊しつつある」という危機感を煽り、それを口実に排外主義や暴力的言動を正当化する…そんな言説が静かに広がっている現状に、クラインは警鐘を鳴らしています。
実際、彼女の発言が反トランプの側を元気づける一方で、一部過激な層がテスラ車を燃やすなどの暴力行動に走る例も確認されており、言葉の影響力とその波紋の大きさを感じさせられます。
なぜシリコンバレーはトランプ2.0を支持するのか
ナオミ・クラインが批判する“終末論的ファシズム”とは別の角度で、もうひとつの現象も進行していました。
それは、バイデン政権への不信感から、かつてはリベラル色の強かったシリコンバレーの富裕層がトランプ支持に傾き始めたという事実です。
その背景には、以下の2点があると考えられます。
DEI(多様性・公平性・包摂性)政策の過剰さ
結果として、白人男性の逆差別に繋がってしまい、企業の意思決定や人材採用に偏りを生んでいるという声が内部からも上がっています。
財政赤字の肥大化と経済の先行き不透明感
社会保障支出と軍事費の増加、不法移民への対応費用などが重なり、アメリカの財政は限界に近づいているとの見方もあります。
そして、象徴的な出来事が起きました。
イーロン・マスク氏が、トランプ大統領とともに「DOGE(Department of Government Efficiency)」という政府効率化省を新設し、その先頭に立つと宣言したのです。
これには自分も驚かされました。
Tesla、SpaceX、X(旧Twitter)と複数の巨大企業を経営する彼が、なぜここで政府業務に自らの時間を割こうとするのか。
もちろん、テスラ株主の立場からすれば手放しで歓迎できる話ではありません。
しかし彼の行動の根底には、「困難であればあるほど、燃える」という彼特有の気質が見え隠れしています。
経済はどこへ向かうのか
トランプ大統領は、再び相互関税政策を前面に掲げています。これは交渉上は有効かもしれませんが、世界経済全体にとっては明らかにマイナスの影響を与えます。
事実、2025年現在、アメリカ株は下落傾向にあり、投資家心理は不安定です。
S&P500もナスダックも揃って下げに転じ、今後の見通しも明るいとは言えません。
こうした不確実性の中、企業は設備投資を控える傾向を強めており、それが景気の冷え込みに拍車をかけるリスクがあります。
また、トランプ氏が唱える“製造業の国内回帰”も、現実的には高いハードルがあります。
アメリカの教育水準や労働賃金を考慮すると、人を多く雇う製造業を戻すことは困難です。
結果としては、自動化されたスマートファクトリーが主流となり、雇用にはつながりにくい構図が見えてきています。
ナオミ・クラインの思想と、ミドルクラスの崩壊
ナオミ・クラインの代表作『ノー・ロゴ』では、ナイキやアップルといったブランド戦略を先行させた企業が「製造はアウトソース、ブランド価値は自国内で創る」という構造を築いたことが批判されています。
この構造は、実際にアメリカの中間層を空洞化させた一因となりました。
Simon Sinekが語る「人は“なにを作ったか”ではなく、“なぜそれを作ったか”に共感する」というマーケティング論に魅了された企業たちは、製造から距離を置き、物語や価値観を売ることに専念していきました。
それが資本の流れを変え、職人や技術者、ブルーカラーの労働者を「時代遅れ」としてしまったのです。
ナオミ・クラインは、そうした“本質からの離反”をファシズムの温床と捉えています。
空虚なブランドと極端な政治言説が、手を取り合って社会を揺さぶる。
それはたしかに“終末論”的な光景です。
それでも、希望はあると信じたい
自分が旅で出会ったアメリカには、まだたくさんの希望がありました。
西海岸のサーファーたち。
フリーマーケットで夢を語る青年。
路上でギターをかき鳴らす音楽家。
分断があるからこそ、結びつきを求める力もまた育つのだと信じています。
トランプ2.0という激動の時代は、混乱を生むでしょう。
しかしそれは、再構築のための“通過儀礼”なのかもしれません。
あの旅路で見た空、風、出会い。
それらの記憶がある限り、自分はアメリカという国を見限ることはありません。
この記事を書いた人

- 代表取締役
- 1985.11.09 滋賀⇄東京⇄滋賀
最近気になるのはChatGPT OpenAi関連… 生成Aiにはどう頑張っても勝てないのでもう考えることを辞めましたw
▪趣味:旅行 ギター 読書 キャンプ 釣りとか…
9年前に始めたBLOGも750記事を超えました。
最新の投稿
ひとりごと2025-04-25「終末論と効率化の狭間で」〜トランプ2.0が照らすアメリカの現在地〜
想うこと2025-04-22揺れる星条旗の下で 〜旅の終わりに見たもの〜
TRIP2025-04-19セントルイスに宿る青年の志
TRIP2025-04-17We Believeの原点へ 〜JCI本部が語る“信条の力”〜